ライトキッズの日常

~ 岡山にある障害児通所支援事業所の日々の活動記録 ~

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身体拘束等の適正化のための指針

施行年月日:令和4年4月1日

1.身体拘束の廃止に向けて

障害者虐待防止法では、「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待に該当する行為とされています。障害の有無に関わらず全ての人々には自分自身の意思で自由に行動し生活する権利があります。一方で、身体拘束とは障害者の意思にかかわらず、その人の身体的・物理的な自由を奪い、ある行動を抑制または停止させる状況であり、障害者の能力や権利を奪うことにつながりかねない行為です。

身体拘束は、何よりも本人の尊厳を侵害することです。そして、関節の拘縮や、筋力や心肺機能、身体的能力の低下、褥瘡の発生等の身体的弊害、意思に反して行動を抑制されることによる不安や怒り、あきらめ、屈辱、苦痛といった精神的な弊害があります。このことは、家族にも大きな精神的負担をかけるとともに、職員等は自らの支援に自信がもてなくなり、モチベーションの低下や支援技術の低下を招くなどの悪循環を引き起こすことになります。

身体拘束の廃止は、本人の尊厳を回復し、悪循環を止める、虐待防止において欠くことのできない取組といえます。

 

■身体拘束の具体的な内容■

車いすやベッド等に縛り付ける。

② 手指の機能を制限するために、ミトン型の手袋を付ける。

③ 行動を制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

④ 支援者が自分の体で利用者を押さえ付けて行動を制限する。

⑤ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

⑥ 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

2 やむを得ず身体拘束を行うときの留意点

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」等には、緊急やむを得ない場合を除き身体拘束等を行ってはならないとされています。さらに、やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならないとされています。

緊急やむを得ない場合とは、支援の工夫のみでは十分に対応できないような、一時的な事態に限定されます。当然のことながら、安易に緊急やむを得ないものとして身体拘束を行わないように、慎重に判断することが求められます。具体的には「身体拘束ゼロへの手引き」(厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」2001年3月)に基づく次の要件に沿って検討する方法等が考えられます。

ただし、肢体不自由、特に体幹機能障害がある利用者が、残存機能を活かせるよう、安定した着座姿勢を保持するための工夫の結果として、ベルト類を装着して身体を固定する行為は、「やむを得ない身体拘束」ではなく、その行為を行わないことがかえって虐待に該当するため留意が必要です。

 

■やむを得ず身体拘束を行うときの留意点■
やむ得ず身体拘束を行う場合には、以下の3要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束を行う判断は組織的にかつ慎重に行います。

①切迫性

利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いことが要件となります。切迫性を判断する場合には、身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要な程度まで利用者本人等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が高いことを確認する必要があります。

②非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないことが要件となります。非代替性を判断する場合には、まず身体拘束を行わずに支援する全ての方法の可能性を検討し、利用者本人等の生命又は身体を保護するという観点から、他に代替手法が存在しないことを複数職員で確認する必要があります。また、拘束の方法についても、利用者本人の状態像等に応じて最も制限の少ない方法を選択する必要があります。

③一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的であることが要件となります。一時性を判断する場合には、本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要があります。

 

■やむを得ず身体拘束を行うときの手続き■
①組織による決定と個別支援計画への記載

やむを得ず身体拘束を行うときには、個別支援会議等において組織として慎重に検討・決定する必要があります。この場合、管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、運営規程に基づいて選定されている虐待の防止に関する責任者等支援方針について権限を持つ職員が出席していることが大切となります。また、必要に応じて相談支援専門員の同席も検討します。

身体拘束を行う場合には、個別支援計画に身体拘束の態様及び時間、緊急やむを得ない理由を記載します。これは、会議によって身体拘束の原因となる状況の分析を徹底的に行い、身体拘束の解消に向けた取組方針や目標とする解消の時期等を統一した方針の下で決定していくために行うものとなります。ここでも、利用者個々人のニーズに応じた個別の支援を検討することが重要となります。

② 本人・家族への十分な説明

身体拘束を行う場合には、これらの手続きの中で、適宜利用者本人や家族に十分に説明をし、了解を得ることが必要となります。

③ 行政への相談、報告

行動制限・身体拘束する場合、市町村の障害者虐待防止センター等、行政に相談・報告して行動制限・身体拘束も含めた支援についての理解を得ることも重要です。行動障害のある利用者支援の中で、事業所で様々な問題を事業所で抱え込んでしまうことがあります。事業所で抱え込まないで、関係する機関と連携することで支援について様々な視点からのアドバイスや情報を得ることができます。行政に相談・報告することで、支援困難な事例に取り組んでいる実態を行政も把握できることになります。また行動改善の取り組みの進捗についても定期的に報告することで、組織的な行動改善に向けた計画的に取り組みの推進を図ることに繋がります。

④必要な事項の記録

また、身体拘束を行った場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項を記録します。なお、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」では、以下のように定められているため、必要な記録がされていない場合は、運営基準違反に問われる場合があります。

 

■身体拘束等の適正化■
身体拘束等を行う場合の必要事項の記録

記録に必要な書式・様式等は、ゼロベースで作成することのみならず、本事例集に紹介されている様式や公表資料等から雛形を入手し、それをたたき台にして検討を進める。身体拘束等の適正化のための対策を検討します。

委員会の開催

① 身体拘束適正化委員会は、法人単位で委員会を設置し、法人が運営や取りまとめをサポートします。

② 身体拘束適正化委員会は虐待防止委員会と関係する職種等が相互に関係が深いと認めることも可能であることから、虐待防止委員会と一体的に設置・運営します。

③ 既存の会議体や委員会(定期的な事業所での会議やケースカンファレンス等)の開催に併せて身体拘束適正化委員会を実施します。

④ 身体拘束適正化委員会は実地での開催に限定せず、オンライン会議等を使用し、第三者が参加しやすいように工夫します。

研修の実施

① 身体拘束に関する研修情報を行政機関や基幹相談支援センター等から収集し、それらの機関が実施する研修機会を積極的に活用します。

② 研修に参加できなかった職員に対しては、研修を録画し、その視聴を促したり、研修の参加者が所内で研修に参加しない職員への伝達研修を実施したりします。あるいは外部研修をもとに事業所所内で研修を実施します。

 

3 身体拘束廃止に関する考え方

身体拘束は、利用者の生活の自由を制限するものであり、利用者の尊厳ある生活を阻むものです。当法人では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく職員一人ひとりが身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識を持ち、身体拘束をしない支援の実施に努めます。 身体拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組みます。

① 利用者主体の行動・尊厳ある生活の確保に努めます。

② 言葉や応対等で利用者の精神的な自由を妨げないよう努めます。

③ 利用者の思いをくみ取り、利用者の移行に沿ったサービスを提供し、個々に応じた丁寧な対応をします。

④ 利用者の安全を確保する観点から、利用者の自由を安易に妨げるような行動は行いません。

⑤ 安易に「やむを得ない」として拘束に準ずる行為を行っていないか、常に振り返りながら利用者に主体的な生活をしていただけるように努めます。

 

4 指針の閲覧について

この指針は求めに応じていつでも法人内にて閲覧できるようにするとともに、当法人のホームページにも公表し、いつでも利用者及び家族が自由に閲覧できるようにします。